【エッセイ第16回】

ビビンバさん

「ビビンバです」

名前の由来は、単に大好物だからです。アジア系料理、大好きです。キムチもスキ!一年半前までは、色々な店を食べ歩いていました。『石焼ビビンバ』がブームになったことがありましたが、私は普通のビビンバのほうが好きですね。『石焼』だと、熱い、熱いといっている間に食べ終わるし、何となく、じっくりと味わえないんだもの。

そんな私は、大学2年の娘と高校1年の息子を持つ母です。高校1年の息子が、アスペルガーです。高校1年といっても、もうすでに不登校で留年ほぼ決定。まだ六月なのにね。

入学二日目からひどい『めまい』『腹痛』でほとんど学校へは行っていません。『自律神経失調症』だそうです。

やっとの思いで入学した高校でしたが、学校が怖い、人間が怖い、起きられない。

自分の子に障害があるだなんて、一年ちょっと前までは、全然、気がつかなかったんです。

たしかに、変わった子ではありました。

恥ずかしいと言う事がよくわからないというか、周りの状況に合わせた行動が取れないので、いつも叱られ役。言っていいこと、悪いこと、イマイチ解からない。勘違いばかりでトンチンカン。自分の世界があって、精神年齢もかなり低いし、何をするかわからない。迷子なんてしょっちゅう。(高校で部活初日、迷子になりました)

それでも元気で明るく活発で、学校大好き、騒ぐの大好き、部活大好き、好きな科目は英語!特技はピアノ!挨拶大好き、行事も大好き、歌も大好き、今日は友達と釣り、明日は映画、次はプール、花火…友達とのおしゃべりも好き。今日も一日目立っちゃおう!だから赤い服が大好き、いつも赤い服。

そのうち大人になる、解かるときがやってくる、と、思っていました。しかし、周りの友達はどんどん大人になっていくけど、うちの子は、そのまま…それでも、のんびりしたお友だちの中で、楽しくやっていました。

中学1年の秋から、何か変。反抗期?違う。親の直感。目付きが違う。すぐに凄い声で怒鳴りだす。

「頭が痛い」「昔の手の傷が痛い」「お腹が痛い」個人懇談で担任に相談。

「いい子ですよ。大好きです。」「明るくて、クラスのムードメーカーですよ。」

とんでもない!ずっと、担任に精神的虐待、言葉の暴力を受けていたんです。神経がズタズタになって、別人のように顔つきも性格も変わり、不登校になるまで、気がつかなかったバカな親です。それが中2の一月でした。

それっきり、あの明るく元気な息子には戻りません。

それでも、頑張って頑張って、本人も高校へ行きたい一心で、生まれ変わるつもりで、やっと合格した高校。でも不登校。

もっと早く障害の事さえわかっていれば、あんなに辛い思いを抱えさせずに済んだかもしれないのに…。

いろいろありましたが、今は不登校の事も親自身が受け止めて、ゆっくりと、わが子の心を癒してあげる事にしています。

世の中では、どうだこうだとか、私自身の常識とか価値観で子どもに接してはいけない。目の前にいる息子を、そっくり丸ごと受け止めて行こう。これが、この子の生き方。

いくら親が意見したところで、ますます反抗して、家の中で暴れるだけだもの。せめて、あの辛い心の傷が少しでも癒されれば…。

今まで、どんなに生きづらかったでしょう。気の済むまで家にいればいい。

最近やっとそう思えるようになりました。前からそう考えるようには努めてきましたが、今月に入ってから、特にそう思えるようになりました。

そろそろまた、おいしいものの食べ歩きを再開しようかな。



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