【エッセイ第41回】

南風さん

「言葉にできない気持ち ありがとう」

はじめまして、南風です。このハンドルは、昔読んだコミックに出てくるコーヒーショップの名前です。私、南風には、姫様と太郎君の二人の子供がいます。障害のある太郎の事は、皆さんよくご存知だと思うので、今回は、太郎や私、そして家族を支えてくれる姫の事を書いてみようと思います。

彼女は、太郎より2歳上のお姉さんです。私にとっては最初の子供であり、とても可愛がって育てました。おっとりした、笑顔の可愛い、ポッチャリした子です。太郎が生れた時は、たいへん喜び、「太郎のお世話は、私がするのヨ。」と言っていました。

二人は、保育園と小学校が同じでした。その間、姫にとって嫌な思いも多かったと思います。今でも私が忘れられないのは、姫が保育園年中だった時、突然「保育園に行くのは、イヤ!!」と言った事です。家では明るく、いつもと変らない様子なのですが、保育園は嫌だと言うのです。原因は、園での太郎の行動だったようです。同じ保育園で過ごす中で、お友達の兄弟と太郎が違う事を感じたようです。

それは、健診で太郎に言葉の遅れがあると言われ、こども相談センターを紹介されて、そこで、母子関係を大切にするよう指導された頃でした。

家族も、母親が太郎にもっともっと優しく接してやれば、障害が良くなると信じ、私が太郎にかかりきりになる事を強く勧めました。今まで、手の掛かる太郎より、姫が優先だったのが、太郎優先になってしまい、姫は、急に寂しい思いをする事になってしまいました。そんな中で、彼女は自分の気持ちを表現できず、外に出ることを恐れてしまったのです。自分自身も解らない障害の事を、彼女が理解できるよう説明する事は、私には出来ませんでした。「太郎の成長のためには、あなたの我慢が必要なの。」と頼んでも、まだ幼い姫に、解ってもらえるはずがなかったのです。

私は、彼女の行動を受け入れ、太郎のいない時に、二人で話し合いました。太郎には、障害があること。お母さんは、姫の事を忘れたのではないこと。姫を大切に想っていること。姫は姫のままでいい、他の人と同じにしなくてよいこと。そして、太郎を育てるために力を貸して欲しいことです。

話し合うなかで、なんとなく理解してくれたようです。障害があり、手が掛かる太郎を、生活の中心に置いているのが、当り前になりつつあったのですが、それ以上に、姫に気持ちを向けてやらなければならないと思わされた出来事でした。

その後も、太郎中心の生活は変わらなかったですが、小・中学校とも姫の気持ちを解ってくれ、応援してくれる先生方や、母の代わりに、彼女と過ごしてくれた親戚に助けられ、姫は、太郎を大切に思う、優しいお姉さんになってくれました。小さい時から、寂しい思いや嫌なこと、多くの我慢をさせたのに、とても素直に育ち、将来は、福祉関係の仕事に就きたいと言ってくれています。

女性である姫には、これからも多くの苦悩が訪れると思います。その時は、一緒に苦しみ、悩み、彼女の助けができる私でありたいと思います。彼女との関係は、年齢とともに形を変えていくでしょうが、彼女を大切に思う気持ちは、変らないことを伝えていきたいと思います。

いろいろな勉強や経験を積み、素敵に輝いてください。素敵に育ってくれて、ありがとう。あなたの頑張りがあったから、私も頑張れたのです。頼りない母ですが、これからもよろしくお願いします。あなたは、私の自慢の娘です。本当に、ありがとう!



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