【エッセイ第42回】

円さん

「太極の教え」

ハンドルは、(マル)。私が数年前からやっている『太極拳』からいただきました。”動き円く、心円やかに、人との繋がりも円く”(だったかな?)との教えをいただき、そうでありたいとの願いを込めて、付けてみました。で、実際は?と言いますと…、子どもを産むまでのウン十年間というもの、自由、気ままに生活出来る環境にいたものですから、自分だけ良けりゃいいのさ!好きなことを好きなだけ!の生活をしていました。”動きパキパキと!心勝手気ままに!人のことより、自分でしょう!!”何でもオッケーの両親の元で育ち、非常に(異常に?)理解のある夫を持ったためでしょうか?ありがたやー。好きな仕事を好きなだけして、苦手なことは、適当にごまかしていたような??

しかし、それを許してくれない存在が登場しました。ジャーン、長男誕生!!彼は、誕生からの1ヶ月を昼夜逆転にて過ごしました。昼は、放っておけば何時間でも眠り続け、夜は、泣いたり、おっぱいを飲んだりと、起き続けました。それまでの、私のマイペースな生活をことごとく突き崩し、いやー、産まれながらに母を超えたヤツだ、と戸惑いつつも、「赤ん坊は、こんなもんか?」と呑気に構えていました。

やがて、超マイペースぶりは、公園遊びでも発揮され、自分の気に入ったことを、気の済むまでやり、お友だちとのコミュニケーション、必要なし!!「うーん、まぁこんなもんか?面倒な人間関係を好まないのも、親譲り?」

二歳の健診で、言葉の少なさに、別室で指導を受け、一瞬ビビッたものの「いやー、男の子なんて、こんなもんだろう。」との周囲の声に励まされ?自分をごまかしつつ保健所を退散!

やがて幼稚園に入園を迎え、入園式当日。ゴソゴソとしながらも、なんとか座っていられるまわりのお友達に対し、式が始まって30秒後には走り回り、とうとう最後まで席には着かない我が子。集合写真では、親に羽交い絞めにされ、泣き叫びながらの撮影!「あーん、一人っ子だからね。」(意味が解りませんが…)園での生活は、少人数だったためか、トラブりながらもそれなりに楽しくすごし、降園後も、時々お友だちと行き来し、ごく普通と思われる生活をしていました。ただ、お友達との関わりが、なんか違うなぁと、うすうす感じてはいたものの…。

そして、運命の日を迎えます。

掛かりつけの小児科の先生の一言。「小学校入学前に、一回調べてみる?」(え?何を?どこかに問題が??)「彼は独り言が多いよね。なかなか目も合わせて話さないし、幼稚園でのお友達との関わりも、気になるんだよね。」お医者さんは園医でもあり、内科検診に行った折、気に留めていてくれたのです。

がーん!!何が何だか解らぬまま、受けた診断名『アスペルガー症候群、積極奇異型』ますます訳が解りません。説明されても、何がどう問題なのかも解りません。「お母さん、今まで困ったことありませんでしたか?」の問いかけに、「全然ありません!!」(おいおい、あっただろう)心はトゲトゲ、ザワザワ。「そんなことないもん。違うもん。認めないもん。」

慌てて担任の先生に相談。「そう言われてみれば、アレもコレも…。」(あったんかい??)周囲のお友だちのお母さんたちに聞くと、これまた「そうね、あんな事やこんな事かしら?」あれ?…ってことは私だけ??何にも気付かなかったのは。っていうか、気付かないフリをしていたのかしら??うーん、そう考えれば、合点のいくことの多いこと多いこと。ゴクリと飲み込むまでに半年かかりました。(親の会に入るまで)

私が納得してからの彼との生活が、楽になったこと、楽しくなったこと。園でも、担任の先生の協力のもと、お友だちとの関係も変わってきました。「あいつは変わっていて、変な奴だ!」から「変わっているけど、面白いじゃん!」

そして、クリスマス会の生誕劇には、主役のヨセフ役を堂々とこなし、バレンタインデーには、マリア役の女の子からファーストチョコをゲット。3月の卒園を迎え、母は張り切って余興の稽古に連日励むという、最後の園での生活を、親子で楽しんでいます。

彼の診断によって、彼自身の存在を考えて、親子の関係を、良い感じに軌道修正することができたように思います。これから小学校に行き、様々なことも起こると思いますが、その都度、自然に逆らわず、周囲にも、彼にも聞く耳を持ち、そのまんま、丸ごと受け入れられたらいいなぁと思っています。

動き円く、心円やかに、人との繋がりも円く



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