【エッセイ第43回】

ハイチュウの母さん

「卒園式を迎えて」

ハンドルはハイチュウの母。由来なんて大それたものはなく、息子がハイチュウ大好き!ただそれだけなんです。皆さんとっても奥が深い、ステキなハンドルなのに…。わたしも、もっと考えれぱよかったなー。

現在息子は6才、自閉症児の親歴は3年になったところです。最初に診断を受けた時から、大変な事の方が多かったはずなのに、この3年間を振り返って見ると、息子の楽しげな姿ばかりが思い起こされます。それと言うのも、幼稚園生活が充実していたおかげかもしれません。

先日、その幼稚園の卒園式がありました。息子にとっては、かなり長い時間座っていなければならないし、修了証書授与に卒園コール(※)、大丈夫なのかな…と思っていたところ、「ハイチュウちゃんは、がんばって練習しています。本番はお父さん、お母さんも、お席の方で見ていてください。」と担任の先生から言われました。

そして迎えた当日。卒園児入場。袴で正装した担任の先生に続き、名簿順で2番目に入ってきました。ちゃんと、みんなと一緒に、きちんと歩いて席に着きました。他の園児が席に着いたあと、後ろを振り返ってから、少し遅れて席に着きました。練習の時はいなかった保護者がいたからでしょうね。息子らしくて、思わず微笑んでしまいました。お参り、君が代斉唱の後、いよいよ修了証書授与。最初のお友だちの証書が読み上げられている間、息子は2段下の所で待っていました。この時も、後ろを振り返っていましたけど…。

そして、息子の番。背筋を伸ばして、キチンと…ではなかったけど、お辞儀をして、理事長先生から証書を頂きました。その後、とても嬉しそうに、並んで待っているわたしの所に来て証書を手渡すと、また、嬉しそうに席に戻って行きました。わたしはもう、証書を受け取る前からウルウルで、息子の顔もよく見えないまま「ありがとう。」と言っていました。他の園児が証書をもらっている間も、2年間の色々な事が頭をめぐり、涙が止まりませんでした。

2年半前、幼稚園を決めるために、何箇所も見学しました。あの時の行動力は、普段のわたしには無いものでした。わたしは、ほぼA幼稚園に決めかけていました。でも、何か胸にモヤモヤしたものがあって、スッキリしなかったのです。そんな時、こども相談センターで指導を受けた先生に「M幼稚園か、K幼稚園に行ってみたら。」と薦められました。 どちらの幼稚園も自宅からは結構遠く、通うのが大変だなという思いが強かったのですが、一応行ってみることに…。M幼稚園の後、K幼稚園に行きました。そしたら、息子がサッサと靴を脱ぎ、ホールに翔けて行ったのです。その時、わたしは「この幼稚園にしよう!」と、直感的に思いました。主任の先生の印象も良く、ますます強く「ここに入園したい!」と、思ったことを今でも覚えています。

そして、入園。初めは、クラスの女の子に「ハイチュウちゃん、何言ってるか分からない。」と言われ、落ち込んでいたわたしでした。今では、その女の子たちも、優しく息子に関わり、世話をしてくれます。男の子も、さりげなく手助けしてくれます。結構、お友だちに愛されているんだなあ…と感じます。何より、幼稚園で過ごしている息子が、とても楽しそうでした。

卒園コールもお友だちと2人で、立派に言えました。式の後の謝恩会は、笑いあり、涙ありのとても楽しいものでした。家に帰ってから、お祝いに頂いた品や、息子が幼稚園で使っていた物を見ながら、「もう幼稚園で使うこともないんだ。幼稚園、今日で最後なんだ…。」と思うと、次から次へと涙があふれて止まりませんでした。

4月からは小学校。幼稚園とは全く違う環境です。どんな困難が待ち構えているかわからないけど、園生活で得たものを土台にして、がんばりたいと思います。

※卒園コール
卒園児がステージを背に横一列に並んで立ちます。そしてBGMが流れる中、園での1年間の行事を園児が1人ずつランダムに語ります。また、その合間に行事に関係ある歌を皆で歌います。



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