【エッセイ第47回】

ムーミンママさん

「私のムーミン」

私のハンドルはムーミンママ。子どもの頃好きだったアニメです。家族思いで、お料理上手の優しいママ、こんなお母さんになりたいな〜なんて思っていました。

うちのムーミンは、次男ですが、私にとっては「初めての子育て」という感覚で楽しんでいました。長男は生後二ヶ月で母に預けて仕事にでたものですから。

生後一年間は、充実した子育て期間でした。夜泣きもなく、人見知りもなく、離乳食もいっぱい食べて、元気な赤ちゃんでした。

産休期間が終わり、一歳五ヶ月で保育園に預けることになりました。入園式の記念写真撮影のとき、今までになく泣いて、私に抱かれるのを嫌がり、のけぞり、でも、なんとか撮り終えて、できあがった写真は、涙でグチャグチャな顔のムーミンが・・・。

2〜3日たって、保育士からの「ムーミン君は、耳が聞こえていないのでは?呼んでも振り返りません。」の言葉・・・。「そんな訳ない!ちゃんと聞こえてる!何言ってんの?」家では呼べば振り返るもの・・・。

も園では違うらしいのです。近所の耳鼻科では検査できず、大学病院の耳鼻科で精密検査しました。結果は異常なしでした。療育相談でも、結果は「様子をみましょう」でした。

「様子をみましょう」と言われバカな私は、ムーミンの"他の子と違う何か"に気付いていながら、行動を起こしませんでした。

年中の参観日のこと、「カルタ」をすることになりました。広いお遊戯場に、大きなカルタを並べて、先生が読み上げて取ります。自分の近くにあるのは取れますが、遠いところは取れません。勝ち負けにこだわりのあるムーミンは、取られる度に、お遊戯場の真ん中で、ギャーギャー泣いています。当然、他の親子の冷たい視線・・・。

私にもっと、ムーミンの障害について知識があれば、こんなつらい思いをさせずに済んだのに。私がもっと早く行動していれば・・・・。あの頃は、ただただ途方に暮れるだけで、親子で毎日泣いていました。

でも泣いてばかりはいられません。母なのだから。親の会の皆さんに出会い、地域のサークルに入り、知識と勇気と元気をいただきました。「私だけじゃないんだ」という思いが、どれだけ救いになったことか・・・。本当に本当に、感謝しています。

先日、地域のお母さん方に、ムーミンの障害のことを初めて話すことができました。とても緊張しましたが、話してよかった。反応は様々でしたが、話せたことが、私にとっては大切で・・・。

今年、ムーミンは小学2年生になりました。入学してからは、「教室脱走、行方不明事件」、「音楽室の木琴の下にもぐったまま出てこない事件」・・・まだまだ、いろいろあります。これからも、もっといろいろあるのでしょう。

ひとつ、ひとつ、乗り越えていきます。親子で、頑張り過ぎず、頑張っていきたいと思っています。



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