自閉症サポート・カード


最終更新日は2002年10月15日です。


画像

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小さいカード(名刺サイズ)の表です。
小さいカードの表

小さいカード(名刺サイズ)の裏です。
小さいカードの裏

大きいカード(葉書サイズ)の表です。
大きいカードの表

大きいカード(葉書サイズ)の裏です。
大きいカードの裏


配布

自閉症サポート・カードは、社団法人日本自閉症協会新潟県支部の会員へ無償で配布されています。新潟県支部へ入会ご希望の方はこちらへお問い合わせ下さい

なお、新潟市自閉症親の会は、社団法人日本自閉症協会新潟県支部の下部組織ですが、ご入会に当たっては別途入会手続きが必要です。新潟市自閉症親の会へ入会ご希望の方もこちらへお問い合わせ下さい

また、新潟市以外に、長岡・三条・柏崎・上越にそれぞれ、親の会があります。最寄の親の会へのお問い合わせも随時こちらで受け付けています

資料

新潟日報に掲載された記事はこちらからご覧いただけます。

自閉症サポート・カードを作った経緯

「自閉症カードをつくりませんか」

 私のつぶやきにも似た「お手紙」が、協会発行誌『いとしご No66』に掲載されたことがきっかけでした。
 自分自身の考えていたことが自分一人の思いではなかった事、東京都支部では準備を進めていたことを知り、いよいよ、具現化したいと思っていました。
 この度、機会に恵まれ、新潟県支部の事業として展開できる運びとなりました。

 私の子は、歩けるようになった途端、外へ外へと出て行くタイプの子でした。地域の派出所どころか、警察署にまで保護されたこともあります。
 息子の「思い立ったらおでかけ」行動は小学校の3年生まで続きました。「自閉症とは」の説明も立て板に水のごとくになりかけたころ、彼の行動はおさまってくれたのですが、いつもいつも、事が起こる度(起こす度)、「自閉症」というハンデキャップの理解をいただくことが難しいと感じていました。また、個人で関係機関へ対応するということは、誤解も生じさせていたかもしれないし、忘れ去られてしまうこともそうで、この世の中に私一人…という孤独感との戦いでもあったように思い返します。

 地域で彼らを育てるということは、言うは易し、されど行うは…難過ぎる。

 「迷子なんです」「どうにも見つけられません」と交番にお願いしなければならないという、その苦渋の選択。迷子とは言っても、当の本人は「迷子」じゃない。本人は、行きたいところがあって、行っているだけで、行き先を知らせないことがどういうことか、とか、行くには行ったが帰ることまで考えていない。そんな心配をしているのはいつもこちらで、当の本人はわけがわかっていないので、「迷子とは」の学習もしない。
 親だって、ミスミス行方不明にさせているわけじゃない。物凄いアンテナをピンと立て、立てつづけ、どんな微細な音も聞き分ける術を身に付ける。また、彼の行きそうな場所、現在の彼の目的を類推し、ひと度玄関のドアが締まる、その音を聞くやいなや、後を追う。
 家中のドアというドア、窓と言う窓に施錠すれば、未遂に終わらせることも可能かもしれません。
 しかし、私はそうしませんでした。それは何故か。
 私は、この子の世界が知りたかったのです。どこまでも彼に添いたかった。言葉をたくさん持たない子だから、わかってもらえない彼、わかってあげられない私、共に苦しみを抱えている。彼の行動に付き合うことだけが、当時の私にできることだったのです。息子の行動を通してしか、彼の内的な世界を知ることができなかった。しかし、また、彼の成長を信じてもいるのでした。
 もちろん、着ている物には縫い付け名札。「名札」一つとっても、安全ピンで留めるような名札は嫌がって取ってしまう。付けた名札を取らないように、「我慢させなきゃ」「叱らなきゃ」って思われる方もいらっしゃるでしょう。歯痒いことですが、彼らにこちらの世界のルールを教えていくことは途方もなく、長い年月を必要とするのです。
 こうして、たくさんの苦い経験の末、彼は学校から一人で下校するまでの力を得られるようになりました。

 自閉症のこどもを知らない方たちは、私たちの子がどこの学校へ通っているのかをご存知無いと思います。
 地域の校区に該当する学級がある場合の方が少ないのです。(新潟市では情緒障害児学級)
 勢い、校区外通学となります。私の家の場合は片道2キロ。歩いて歩けない距離ではないので、校区外でもラッキーな条件でした。交通機関を利用するほど遠かったら、6年間自家用車による送迎だったかもしれません。何故、ハンデのある子がハンデのない子より遠い所へ通わなきゃならないの!という怒りがあるにはありました。当然、通学路に指定されていない道。歩行者用の通路も確保されていない、交通量の多い道を越えていかなければなりません。さらに、地域のお友だちと共に通うこともないので人の目も無いということです。
 しかし、歩いて下校できるまでになった息子の支援は継続しなければなりません。
 この下校が、また、ひととおりではないのです。必ず寄ってしまう店があります。学校を出てすぐのケーキ屋さんは裏手にケーキ職人さんがケーキを作る工房があり、それを飽かずに見学。更に進んでいくと、文房具屋さんが自動ドアで迎えてくれる。バラ売りの水彩絵の具がキレイに整理整頓されているかどうかをチェックして帰途につく…などなど。彼の行く先々、『自閉症の手引き』を片手にご挨拶に伺う。
 予想を反して彼はいつも歓迎されていたようです。小学校までは。それにしても、心細い。
 「人に迷惑をかけてはいけない」は、世の掟。当たり前の躾。自閉症児を抱えた親たちの多くは、意識過剰になってもいます。その文言が頭から離れることはないのです。それが地域に出すことを阻み、結果として狭い世界で暮らすことになり、社会の学習がより、遅れてしまのです。
 彼を囲わない。彼に添う。と覚悟を決めたものの、正直、心休まることはありませんでした。現在も(中学2年生)決して手放しで安心しているわけではありません。

 以上のような経験と今後の彼らを取り巻く環境、つまり成人した後、地域社会の中でどれだけの支援が必要かを想像したとき、どうしても彼らを守る「印籠」が欲しかったというのが動機です。
 障害があるから、ナンデモカンデモ許してくださいという意味ではなく、地域社会の中で彼らが何とか息づいていくためには、彼らだけの力では成し得ないということと、誤解や偏見の中での生活はできないということ。親がいつまでも寄り添いつづけられるわけでもないということ。
 そのために、このカードはこれから地域社会で生きていく彼らに必要な支援グッズの第1号であり、広く世の中に自閉症の正しい理解を求めたいという啓蒙の意味合いをこめています。

 一風変わった彼らを、どうぞ見守ってください。また、いけないことは「いけません」とはっきり教えてやって下さい。願わくば、お子さんをお持ちでしたら、我が子と同じように、同世代であったなら、たくさんのともだちと同じように、一声かけてやって下さい。心から、よろしくお願いいたします。

文責:角田千里