第2回 オリーブさん


「 夜 の 信 越 線 珍 事 件 簿 」

私はオリーブ。オリーブからすぐポパイを連想された方とは、たぶん幼少時代ポパイを見て育った同世代です。なぜオリーブか・・・。これも人から付けてもらった名前です。夫ポパイがすんなり決まり、その付属物としてオリーブになっただけの話。でも私は、本家オリーブのように「ポパ〜イ!」「ポパ〜イ!」などと助けを呼ぶ事は決してありません。神に誓って!

こんな私が〆切り間際に書き上げたつたないエッセイの館にどうぞ御案内致します。

ギッ、ギ〜〜 ・・・・

我が家で家族だけで過ごしているひと時は、おかしな言動や行動で私達を笑わせてくれ、今風に言えば家族に『癒し』を与えてくれる息子ですが、家から一歩外の世界へ息子を連れて出ていくと恥じをかいたり謝って歩いたりという出来事が少なくありません。そんな数有る出来事の中から最近のものをひとつ紹介します。

息子はバスや電車に乗るのが大好きで数年前は休日毎に用もないのにバスに乗って古町まで出掛けていた事もあります。その頃はバスの一番後ろの席が好きで、空いていれば必ずそこへ座りますが、空きがなければすぐに諦めて他の席に座っていました。満席であれば立っていた事もあったと思います。それが最近、電車の場合、乗り込むと必死で空席を探し少しでも隙間が空いていればお尻を割り込ませてちゃっかり座る、という技を身に付け、つめれば十分ひとり座れるスペースがある事が多かったので私も黙認していました。

バスは『一つの座席にひとり』ととても分かりやすい造りになっていますが、電車の場合はボックスシート以外は私達の子供にはとても分かりにくいと思います。横長のシートに何人座れるのか。どのくらい空いていれば座れるのか。なかなか判断が難しいです。

それに加え、最近は公共の乗り物に乗る時のマナーが皆さんヒジョーに悪いです。荷物を膝の上、または網棚に乗せずに自分の横に置いてふたり分のスペースを占領したり、詰めて座らずに隣の人との間を少しあけて座っていたり(ひとりでも多くの人が座れるようにできるだけ詰めて座るのが常識ですよね)大股を広げて、あるいは足を横に組んで座っていたり。もうちょっと周りの人達の事考えましょうよ。ついでに言わせてもらうと、友達2〜3人で乗り込んでくる若者は電車の中に落ち着くとすぐにそれぞれが携帯電話を出してピコピコ始めます。目の前の友達と話す事よりメールの相手とピコピコする事の方を優先する、それも私には理解出来ない光景です。

話が横道にそれてしまいましたが、それは夜の信越線の中で起きました。通勤ラッシュは終わっていましたが、残業帰りのサラリーマン等で満席、立っている人もいました。息子は、いつものように空席を求めて車両を小走りで往復してきましたが 残念なかったようです。…と、次の瞬間、目の前のふたりの女性の間に座ろうとして彼女等の太腿の上にどっかりお尻をおろしたのです。この時はいつもと違ってマナーどおり隙間なく座っていましたので(さすが通勤ラッシュ慣れした大人の時間)息子が割り込む余地はありません。驚いたのは私だけではなく、太腿をクッション代わりにされた彼女達もギョエ〜だったのでしょう。とっさに立ち上がって合計3人の方が息子の為に席を空けてくれました。意表をついた息子の行動に頭が真っ白になった私は「すみません。すみません。」と言うのが精一杯で、静かな車内で、何事?と注目を集める事となりました。徐々に冷静さを取り戻し、こういう時ちゃんと息子の障害の事を説明して、さらには、『混んでいたら立っていなければいけない事を教えたいので、このまま立たせてください。』と言えなかった自分を責め、暗い気持ちでもう一度お礼とお詫びを言って駅を降りたのでした。そして、もっと強い母になるぞ〜と決心し、乗り物に乗る前には『席が空いていなければ立つ』事を息子に納得させなければいけないと学習した出来事でした。

でも、実はこの話には続きがあり、この時確かに学習したはずなのに、愚かな母は数カ月後、そんな事をもうすっかり忘れ去ってしまい、込み合ったバスが停留所に止まってもまだ思い出さず、またまた失敗を繰り返す事となったのです。

次は、二度ある事は三度あるになるか、三度目の正直になるのか…物語はまだまだ続くのでした。

to be continued …