第31回 夏炉冬扇さん


「頑張らない」

みなさん、こん○○は。私は、長男が5才のヘビィな自閉症児の父親です。
ハンドルは夏炉冬扇(かろとうせん)。
我が家の西大后もとい…楊貴妃に名付けられました。
最初は『昼行灯(ひるあんどん)』でどうかと妻に打診しましたが、
「アナタの役立たずさは、そんな生ぬるいもんじゃないから、
もっと役に立たないことをアピールしなさい!」ということで、
1文字追加されました。

妻は、10年前までは綺麗だったらしく、私らの披露宴に出席した私の同僚は、
「あんなに美しい花嫁は初めて見た」などと言っていたとか、いないとか…。
まさに、『外面女菩薩 内面女夜叉』という表現がぴったりの女性です。

さて、「大嘘」はこれくらいにしまして、本題にまいりましょう。

娘が産まれて3年、私たちは、二人目だから「男の子がいいね」などと
脳天気に考えていました。
予定日より少し遅れて産まれた子は、”待望”の男の子!!
この子には、私が英語とバスケットを教え、将来はアメリカで年収20億円のプロバスケット選手になってもらおう。「目指せ!!NBA」と大きな夢を描いていました。
まっ、どのみち最初から無理な夢だったのですが…、プロ選手どころか、
たぶん部活もしないことでしょう。(T_T)

最近の長男は、「ママ」「パパ」「いや〜」などが言えるようになり、
他にも「いたい」とか「おいしい」とも言っているようです。
(他人様には、そう聞こえないかもしれませんが)
たくさんの言葉を使うアスペや高機能自閉症児も育て辛いかもしれませんが、
喋ってくれないのも非常に辛いです。

小さい頃は、延々と泣いていても、何が原因なのか、さっぱり分りませんでした。身振り・手振りは勿論のこと、何の要求手段も持ち得なかったのですから…当然ですね。

4才くらいまでは、名前を呼んでも素知らぬ顔で走っていってしまうし、
言葉による指示など、ほとんど入らず、通じるのは
「ごはん」と「おふろ」と「おでかけ」だけ、という有り様でした。
おも○しをして、ズボンがびしょ濡れでも、笑って走り回り、遊び続ける
息子…。

そんな息子を見て、正直、将来の展望は何も見えず、親子2人で東南アジアにでも行って、10万円程度でこの世から消してもらおう、などと考えたりしました。
しかし、保険事務で働く妻は、
「東南アジアで殺されても、確かな死亡証明がとれなくて、保険金の支払いが怪しいから…、国内の交通事故の方がいいかな…」と。
この一言で、「死んでたまるか!」と思い直し、親子共々、生き長らえて
今日に至っています。

そんなにたいへんだった息子も、今では名前を呼べば振り向くし、
「おしっこ」と促せばトイレに行きます。
着替えも、少しずつ1人で出来るようになりました。

最も嬉しい変化は、自分から他の子供にちょっかいを出すようになったことです。
年少までは、園の他の子が嫌いで、寄って来るだけで身をよじって逃げていたのに、なぜか今年に入ってから、近寄って行くようになりました。
その子は「寿限無」をソラで言える自閉君なのですが、我が家の長男も父親に似て、落語好きなのかもしれませんね。

「寿限無」と言えば、我が家には3才上にお姉ちゃんがいまして、
その長女も「寿限無」が言えます。もちろん長男とも仲良しです。
お姉ちゃんは、小学校2年生なのですが、母親に似て、学年で一番のノッポです。9月の身体測定では、2年生の平均身長より15cmも大きかったそうです。リレーの選手になったり、水泳も速いそうですが、体が大きいから当り前ですね。

お姉ちゃんは、与えられた課題をこなすのが嫌いで、なかなか宿題をしようとしません。そのくせ、図書館から本を借りてきて読んだり、好きなプリントは自分からやり、せっせとポイントシールを貯めたりしているので笑えます。
ある時、クラス全員でパソコンを使ったクイズをしたらしいのですが、「私の成績は2番だった。1番は先生だった。」と淡々と報告してくれました。実は、私もクイズ好きなので、こんなところも似るものなのだ…と、おもしろい気がしています。

お姉ちゃんは、部屋の片付けとお風呂に入るまでが嫌いなので、
「汚ギャル」に育つんじゃないかと心配することもありますが…、
猛母(いやっ、変換まちがいっ)孟母がいるから大丈夫でしょう。
これからも、もっと、もっと大きく育って、日本を代表するスーパーモデルになって欲しいと願っています。(…って、違うか?)

長男が私と会話できるようになるまで、何年かかるか分りませんが、
私は健常児の親と同様に、頑張らず子育てをしていきたいと考えています。

最後に、私が変死したら、絶対に妻の仕業です。
是非とも通報をお願いします。

え?私の妻が誰かですって?IT班所属らしいです。(笑)