第34回 あなくまさん


「ぼくは、Kちゃん。」

ぼくは、Kちゃん。5歳だよ。
お母さんのハンドルは、あなくまっていうんだ。
『でこぼこフレンズ』のあなくまを、ぼくが好きだったからなんだ。
でも、今はもう好きじゃないんだ。…あきたの。
ぼく、熱しやすく冷めやすいんだよ。
今日は、ぼくのお話をするね。

お母さんは、ぼくがお腹にいるときに、
歩いて片道20分の神社まで、よくお参りに行ったんだ。
そのお陰で(?)ぼくは超安産で生まれたよ!!
ぼくの母子手帳には、「大変上手なお産でした!」って書いてあるんだ。
でもね…その神社、燃えちゃったんだ(涙)。

ぼくは、生まれてすぐから、すごいアトピーでね。
お母さんは、ぼくに薬をつけ、掻き壊さないように、
泣きながら包帯を巻いてくれたよ。
あのときも、とってもつらかったんだ。
あの手、この手、悪徳商法にも引っかかったんだって。
でも今は、有名な先生の薬で、ずいぶんきれいになったよ。

その頃、1歳半健診があってね、
ぼく…しゃべらなかったんだ。
お母さん、アトピーのことで頭がいっぱいで、気がつかなかったんだって。
余裕…なかったんだよ。

ぼくには、お兄ちゃんがいるんだけれど、
お兄ちゃんも、おしゃべりはあんまり早くなかったんだって。
だから、お母さん、そんなに気にしてなかったんだ。

3歳くらいかな?ぼく、単語はいっぱい出てきたよ。
だから、お母さんは「大丈夫よね??」って思っていたの。
もちろん、会話になんてなっていなかったけどね。

1歳くらいのときは、天気予報が大好きだったな。
3歳くらいからは、ひらがな・カタカナ・アルファベット・すうじが大好きだったよ。
お兄ちゃんは、『○○レンジャー』とかの本を買ってもらうんだけれど、
ぼくの買って欲しい本は、『ひらがな』とかの本だった。
ぼくって勉強家???

ぼく、3歳のとき、幼稚園に入園したんだ。
でもね、椅子に座っていられないんだ。
お遊戯室の滑り台、大好き!
でも、勝手にすべっちゃいけないの?

ぼく、靴を履くのは嫌いだから、裸足でお庭に出ちゃうんだ。
お友達のお道具箱使ったら、叩かれちゃった。
給食・お弁当は食べれない。
先生たちを、たくさん、たくさん困らせちゃったな。
ぼくって悪い子???

だって、みんなに合わせてると、とっても疲れちゃうんだもん。
ぼく、幼稚園に行くと、具合悪くなるんだ。
すぐ、吐いちゃうんだ。
だから、病院に行って点滴してもらうんだ。
1ヶ月半の間に3回も繰り返しちゃって、入院したよ。
親切なお医者さんが個室にしてくれたんだ。5階の角部屋。
お母さん、何度も飛び降りようと思ったんだって。
疲れもピークだったんだね。

退院してから、幼稚園もお休みの届けを出して休むことにしたよ。
その後、お父さんとお母さんと、はまぐみに行ったんだ。
『高機能広汎性発達障害』って言われたよ。

お母さんは、本を読んで薄々はわかっていたんだって…
でも、なかなか認められなかったんだ。
だからその名前を聞いたときはワァーンワン泣いていたよ。
だって、それは…治らないって、知っていたからさ。
お父さん、治ると思っていたみたい…。
「勉強しなさい!!」と
お父さんは、お母さんにキツーイお説教を受けていたよ。
ぼくのせいじゃないも〜ん。

ぼくが生まれて、お母さんは少し変わったんだ。
あんまり人と関わろうとするお母さんじゃなかったんだ。
ぼくも最近は、お友だちとちょっとだけ遊びたいと思うようになったよ。
ぼくもお母さんも、少しずつ変化しているんだよね。
少しずつだけどね。

おわり