第40回 まる子さん


「日帰り入院」

はじめまして、まる子です。
ハンドルは、息子の好きな『ち○まる子ちゃん』から、もらいました。
その息子の最も苦手なのが、"歯医者"さん。
ところが、昨年の学校健診で、虫歯が発見されてしまいました。
さっそく、障害者歯科センターへ…。

小さい頃はネットで覆ったり、おとな数人で身体を押えたりして、
どうにか治療はできていたのですが、年々身体も大きくなり、
お手上げ状態でした。
受診の際、全身麻酔をして、一度に治療してしまう方法もあります
と助言されました。
全身麻酔…。いろんな思いが頭の中をよぎりました。
きっと注射するんだよねー。
途中で麻酔が切れたら、どうなるんだろう…。

しかし、虫歯は待っていても治らない!
と意を決し、大学病院の歯科を紹介してもらいました。
前日からの入院を提案されましたが、飲んだり、食べたりしない事を条件に、
日帰り入院という事で了解してもらいました。
当日の朝、歯みがきもせず、顔もタオルで拭いただけで病院へ直行しました。

病室で、看護師さんから病衣を渡されました。
「一番大きいサイズを用意したので、大丈夫だと思いますが…。」
サイズは3L。
この大きい身体が入るかどうか?ちょっと不安だったのですが、
ヒモで結ぶタイプだったので、どうにか着る事ができました。
急遽、T字帯も必要となり、主人が売店で買って来たものの、ヒモが届かない!
思わず主人に「一番、大きいの買ってきてくれたの!」と叫んでしまいました。
お腹にヒモが食い込むくらいにキツク、どうにか結んでいたら、
そばにいた看護師さんが一言。「ヒモは、ゆるめにしておいてください。」
余裕なんて、ありませ〜ん!!

麻酔が効くまでは、付き添ってくださいという事で、いっしょに手術室へ…。
10名ほどの医師・看護師さんがいる中、息子はもとより母も緊張でした。
心配していた注射は、うまくクリアー。
しかし、いざ手術台に横になると、一気に恐怖心に襲われたのか、「助けてー」
とばかりに声を出し、母の手をギュッとつかみました。

そんな中、ひとりの医師が声をかけてくれました。
「ほーら、テレビでしか見た事がない道具が、いっぱいあるだろう。」
母も「『白○巨塔』みたいだよ。」などと、少しでも気を紛らわせようと
話かけていましたが、
息子は、とにかくこの場所から逃げだしてしまいたい一心だったと思います。
結局「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」と、声をかける事しかできませんでした。

その後、いちご味のエッセンスを塗った吸入マスクを付けられ、
3呼吸もすると、スーッと目を閉じました。
手術は2時間ほどで終わったのですが、まだ頭がもうろうとしているのか、
泣き声を上げていました。
病室へ戻ってからは、テレビをつけ、好きな『ザ・ワ○ド』を何事もなかった
かのように見ていました。
その後、遅い昼食が出されましたが、普段食べ慣れないおかゆだったので、
2〜3口食べただけでパス。退院の許可が出たのは、午後5時前でした。

こうして、短かくも、長い一日は、終了となりました。
以前は、白衣のお医者さんを見ただけで耳を押さえていた息子。
今回は苦手な薬も飲み、大嫌いな注射も我慢し、息子なりに
"大人になったんだなぁー"とつくづく感じました。

P・S
いつもボランティアでお世話になっている Yさん と偶然お会いしました。
白衣姿が、なかなかお似合いでした。