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■7.学習上の困難

PDDに学習障害が合併することはよくみられます.しかし,明らかな学習障害が合併していなくとも,想像力の障害のために,学習に特有の困難を生ずることがあります.たとえば,算数の文章題で,問題の中の場面が思い描けないために,式が立てられないことがあります.問題の場面を絵に描いたり,ロールプレイを活用したりして,問題の意味を理解させましょう.また,どうしても割り算の意味を理解できないような場合,とりあえず,計算の手順を機械的に教えておいて,意味理解を後回しにして上手くいくこともあります. cmとmm,mlとlなどの単位を変換する場合でも困難が生ずることがあります.この場合も絵に描いて意味を理解させると上手くいくことがあります.最大公約数や最小公倍数を教えるときにも,絵を描いて目で見えるイメージで説明したり,意味理解は不完全でも,手順の習得を優先させたりする工夫が必要となるでしょう.

作文もPDDのこどもが苦労する課題の一つです.例文を与えたり,起承転結のようなモデルを示したりして,文章作成の手順を分かりやすく示してあげて,無理なく取り組めるようにしましょう.原稿用紙と30分もただ睨めっこさせておいては,苦手意識が増強して,ますます状況が悪化します.

一般的に,自由な創造力が要求される課題(たとえば,世界のごみについて壁新聞を作りましょうといったもの)は,小学生のうちは困難でしょう.このような課題では,構成を一緒に考えてあげるとか,資料の集め方の指導とか,集めた資料の中から使える話題を選ぶ方法を指導するといった援助を必要とします.なかなか課題に向かわないのは,なまけではなく,頭の中で創造的に手順を組み立てられないためであることが多いのです.ゆったりとした気持ちで,問題を分析しての具体的な手順を指導してあげることで,問題解決能力の発達を促しましょう.

■8.知覚の異常への対応

特定の音や味に敏感だったり,逆に音声の認識が上手くいかず,悪気がないのに人の言うことを無視したりすることがあります.

苦手な音に慣れさせることは,かなりの危険を伴います.リコーダーの音が苦手なこどもに無理に聞かせ続けると,ますます嫌になって,パニックを引き起こしたり,音楽室には絶対に入れなくなったりします.過敏性が強いときには,当面それを避けさせることも必要です.また,過敏性も,また,ストレスで増強する傾向があります.逆に音声指示を無視する傾向が強いときには,静かに個別に話しかけるとか,目で見てわかるように指示するなどの工夫が必要となります.決して,言うことを聞かないといって,大声で繰り返さないでください.大声を出す人間は,騒音を発する危険な動物と認識されて,人間嫌いなこどもをつくるもとになります.

音に次いで問題を引き起こしがちなのが味覚です.偏食指導が不登校を引き起こした事例はしばしばみられます.食事の時間くらいは楽しく過ごさせたいものです.



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