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■5.ことばやコミュニケーションの問題

PDDのこどもは,自分の気持ちを表現したり,相手の言ったことから気持ちを推し量ったりするのが苦手です.また,コミュニケーションはことばだけで通じるものではなく,相手の表情を読み取ったり,表情で表現したりする部分も多いのですが,これらの表現や読み取りも苦手です.そのことでスムースにコミュニケーションがとれず,会話することに臆病になったり,勘違いして他人が言ったことを被害的に受け取って落ち込んだりすることがよくみられます.PDDのこどもにとって,相手の気持ちになって考えるということは,普通,(想像力の発達の遅れによって)小学校高学年になるまでは無理であると言われています.この年齢になるまでは,<相手の気持ちになって考えてごらん!>というようなお説教は有害無益なのです.

ことばやコミュニケーションの能力を育てるためには,教師や親が,こどもの練習になるような遊びや会話の場を設定してあげることが必要になります.友達を家に誘いたいときなど,一人で自発的にできなくとも,どう言って誘ったらよいか,誘うときには時間や場所の約束が必要であることなどを具体的に教えるとできることもあります.こどもによっては,遊びの場を設定してあげるために,親が中にはいって相手を誘ってあげることも必要です.

具体的な対人関係の経験を積み重ねることによって,ことばやコミュニケーションの能力が育ち,自信を回復させることができます.

■6.こだわりの問題

PDDのこどもは,さまざまなこだわりを持つことが多いのです.特定のゲームにこだわるといった,興味や関心の範囲の偏りや,物事をする順番や物を置く場所など習慣へのこだわりがみられます.

こだわりはPDDの主要な困難の一つです.こだわりをゼロにすることは不可能ですので,現実的に達成可能なところに目標を置く必要があります.どんなに強いこだわりでも,徐々に変化することが多いこと,不安やストレスでこだわりは悪化することを念頭に置いてください.こだわりを直接減らすことよりも,他の有意義な行動を増やすことを第一に考えてください.その結果としてこだわりが軽減するのが理想です.こだわっているビデオ鑑賞をやめなさいというより,一定の時間に決まったスケジュールをこなすように習慣付けましょう.決まったスケジュールをいくつかこなせれば,必然的に一日中ビデオという生活は改善されるはずです.また,日常生活上のストレスや不安が多いと,気持ちを安定させるためのこだわり行動が増える傾向があります.ストレスを減らす工夫をしてあげてください.急なスケジュールの変更は,PDDのこどもを不安に陥れます.こんなときに,こだわりが増強することがあります.もし,普段と違う出来事が起きるときは,できるだけ予告してていねいに説明しましょう.



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