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■3.高機能広汎性発達障害(HF-PDD)のこどもによくみられる特徴

PDDのこどもは高機能であっても,その場にあった行動ができなかったり,相手の気持ちを推し量れなかったり,興味や関心が偏っていたりすることで,特に社会行動やコミュニケーションの困難を来たします(4〜6節参照).学習場面でも問題の意味や求められていることをイメージすることができないために,後述のような困難を生じることがあります(7節参照).また,こどもによっては,特定の音や味に対して異常に敏感なために,音楽室や給食の場面などで著しいストレスを生じて,そのことが激しい不適応行動につながることがあります(8節参照).これらの困難を,わがままとかこどもの性格とか親のしつけのせいにせず,障害に基づいて理解した上で,対応することが大切です.こども自身が自分の障害を理解することも重要です(9節参照).

■4.社会行動や日常生活の特徴

その場で何を求められているか理解できないために不適切な行動をとることがあります.たとえば,厳かな雰囲気の儀式の最中に不謹慎な冗談を飛ばすなどの,一見してふざけたような行動をとることがありますが,その場の意味を理解できないのが原因であることが多いので,ていねいに<どう行動すべきか>をその都度繰り返し教えていく必要があります.その際に,<そうやる代わりにこうしなさい>と具体的に教えることが大切です.ただ禁止するだけでは,代わりにもっと不適切な行動を起こすことがあります.

また,集団行動を教える場合には,そのこどもにとって難しすぎる場面を設定しないように注意しましょう.たとえば,運動会が嫌いなPDDのこどもを考えてみましょう.嫌いな理由は,うるさい,手に土がつくのは汚くて嫌だ,不器用でダンスを踊ることができないといったような,PDDによる知覚の過敏性や不器用さ(PDDのこどもには極端な不器用さもしばしばみられる)に起因することが多いのです.このような場合に無理をさせると,とても嫌な状況でのがまんが不適応行動を誘発し,それで周りから叱られる,叱られるのでイライラしてまた不適応行動を起こすという悪循環に陥ります.集団行動を教えるには,まず,無理のない小集団で,どんな時にどんなふうに行動すべきかをていねいに教えましょう.

日常生活では片付けが苦手であるとか,歯磨きなど毎日しなくてはならないことを忘れるといった特徴がよくみられます.片付けの手順を頭の中で組み立てるとか,スケジュールを頭の中に置いておくことができないといった障害が原因となります.普通なら無意識にできることが,できないのです.一緒に片付けながら,具体的な手順を考えてあげたり,スケジュールを忘れないための工夫を考えてあげたりすることが必要です.ただ,ちゃんとやりなさいなどと叱ることは問題を悪化させることがあります.



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